年収1,000万円を超えると「高収入」のイメージがあります。しかし、その一方で「税金も高くなるので、思ったより使えるお金は少ない」「年収1,000万円代ではさほど豪華な暮らしはできない」といった意見もあります。
また、「年収1,000万円を超えると生活はどのようになるのか」と興味を持っている方も多いでしょう。
本記事では、年収1,200万円の手取りや税金の平均額、生活レベル等を紹介します。
年収1200万の人の割合や手取りはどのくらい?
はじめに、年収1,200万円が占める割合や、手取りなどについて解説します。年収1,200万円を単純に12で割ると月収120万円ですが、そこから税金が引かれるので年収と手取りは同額ではありません。
また、ボーナス込みで1,200万円と、ボーナス無しでの1,200万円でも手取りは変わってきます。
年収1200万円以上稼げる人の割合は?
厚生労働省が発表した「2022年度国民生活基礎調査の概況」によると、2021年度における全世帯の平均所得は545万7,000円、中央値は423万円でした。
そのような中で年収1,200万円以上の方は2.1%、100人に2人の割合です。年収1,000万~1,100万円の方が3.1%なので、さらに1%低くなっています。
なお、この結果は世帯年収なので夫婦共働き、もしくは夫婦と子ども、両親で働いている家庭も含まれます。夫婦共働きの場合、両者とも600万円ずつ稼げば年収1,200万円です。
年収1200万円の手取りはどのくらい?
年収1,200万円を1人で稼いだ場合税金を引いた手取りは約850万円、月収約71万円です。所得にかかる税金は、所得税・住民税などがあります。また、雇用保険・年金・社会保険料などもかかります。
所得税は累進課税、住民税は所得の10%なので年収が上がるほど高くなるのです。それに加えて、配偶者控除は年収1,000万円を超えると適用外になり、児童手当ても子どもの人数によっては支給されません。
なお、ボーナスなしで年収1,200万円の場合と、ボーナスありで年収1,200万円の場合は月々の手取り額は変わってきます。
夫婦共働きで年収1,200万円の場合は、配偶者は扶養から外れるのでそれぞれに税金や健康保険料、雇用保険、年金などが課税されます。したがって、1人で1,200万円の収入がある場合に比べて、世帯で考えると税金は高めになる場合もあるでしょう。
年収1200万の人の家賃や生活レベルはどのくらい?
この項では、年収1,200万円の方がどのくらいの生活をおくれるのか、おおよその目安を紹介します。一口に年収1,200万円といっても、独身・夫婦2人暮らし、子どもがいる場合で、必要な生活費は変わってきます。
家族構成の違いによっての生活レベルも紹介するので、参考にしてください。
年収1200万円の場合に家賃に支払える額は?
賃貸物件に住む場合、家賃は年収の25%程度までに抑えると余裕がある暮らしができるといわれています。年収1,200万円の場合は手取り額が約850万円程度ですから、16万~17万円が余裕がある暮らしができるラインです。
東京都の場合、1LDK・2K・2DKまでならば文京区・世田谷区・墨田区・江東区など23区内でも多くの地域で駅から徒歩10分以内の物件が借りられます。
独身や夫婦2人暮らし、もしくは子どもが未就園児までならば、利便性の良い場所で暮らせるでしょう。東京都でも23区外ならば、3DK、3LDKといったファミリー向け賃貸でも駅チカなど利便性のいい場所に借りれます。
独身で月収1200万円の場合はかなり余裕ある暮らしができる
2023年度総務省統計局の家計調査によると、2023年の単身世帯の平均支出は家賃を含め、16万7,620円です。年収1,200万円の月収は約71万円ですから、平均支出程度の生活費だった場合、50万円以上の余裕があります。
したがって、東京などの都市部の駅近など利便のいい場所に住み、お金がかかる趣味を持つこともできるでしょう。
旅行をはじめとする遊興費にある程度お金をかけても大丈夫です。また、仕事などが忙しい場合は余ったお金を投資に回して資産を増やすこともできます。
夫婦2人暮らしで月収1200万円の場合も余裕ある暮らしは可能
総務省統計局が発表した、2024年2月における2人世帯以上の消費支出の平均は27万9,868円でした。なお、この数値は2人以上が住んでいる世帯すべての平均なので、夫婦2人暮らしならばもう少し支出を抑えられるでしょう。
仮に、支出が28万だとしても余剰が43万円あります。夫婦共働きの場合は、家事代行サービスやハウスクリーニングなどを定期的に入れることもできます。また、月々まとまった額を投資に回したり、子どもができた場合に備えて貯蓄したりも可能です。
例えば、余剰分43万円のうち、家事代行に月10万円、貯蓄や投資に月20万円回したとしても、10万円の余剰があります。したがって、夫婦2人で年に数回旅行に行ったり、お金がかかる趣味を持ったりもできるでしょう。
子どもがいる場合は年齢によって余裕度が変わる
子どもがいる場合は、教育費がかかってきます。子どもを幼稚園から高校まで公立に通わせた場合平均で265万円、全て私立に通わせた場合、平均1,238万円教育費が必要です。ただし、この金額に塾や習い事の費用は含まれていません。
塾や習い事を含めるとすべて公立の学校に通わせても平均で561万円、私立だと平均で1,851万円が必要といわれています。さらに、大学になると国立だと平均で約282万円、私立だと文系で約448万円、理系だと595万円、私立大学の医学部だと約1,674万円が必要です。
なお、これは子ども1人当たりの値段であり、子どもが2人の場合は2倍、3人の場合は3倍かかります。子どもが1人ならば、2024年2月における2人世帯以上の消費支出の平均が27万9,868円なので、余剰分の43万円から月数万円の教育費を捻出するのはさほど難しくありません。
しかし、子どもが複数いる場合や子どもが大学進学などで遠方に下宿する場合は、月に10万円以上出費が増えるケースもあるでしょう。そうなると、節約を意識した生活になる可能性もあります。
年収1200万を超えたら税金はどのくらいになる?
年収が高くなると気になるのが税金です。ここでは、年収1,200万円を超えると税金がどのくらいになるか、目安を解説します。
所得税と住民税は所得が上がるほど増える
年収が増えると税金も上がっていきます。会社員の場合、給与から天引きされる税金は所得税と住民税です。所得税は「課税所得金額×税率-控除額」で計算します。
会社員で年収1,200万円の場合は、1,200万円から給与所得控除と所得控除を足したものが、課税所得額です。1,200万円の給与所得控除は195万円、所得控除は人によって異なります。
給与所得1,200万円から、給与所得控除と所得控除を足した額が900万円未満ならば所得税の税率は23%、900万円~1,100万円台なら税率は33%です。
算出した金額に、税率23%なら63万6,000円、33%ならば153万6,000円の控除額を引いた額が、年間の所得税です。年収1,200万円ならば、年間の所得税はだいたい118万円前後になる可能性が高いでしょう。
住民税は、課税所得×10%に住民税の均等割を足した金額です。住民税は地方税なので詳しく知りたい場合は、お住まいの自治体のホームページを確認してください。
所有している財産に関してかかる税金
給与から天引きされる税金のほか不動産を所有していれば固定資産税、自動車を所有していれば自動車税や自動車重量税がかかります。土地の広さや物件の価値、自動車の種類や重量によって値段が変わるので、人によっては多額になる場合もあるでしょう。
なお、住宅ローンを利用して住宅を購入していた場合、住宅ローン控除を利用すれば所得税を抑えられるメリットもあります。
税金以外に給与から天引きされるもの
税金以外に給与から天引きされるものには、以下のような種類があります。
- 社会保険料
- 厚生年金
- 介護保険料
- 雇用保険
社会保険料や厚生年金は標準報酬月額によって決まるため、年収が高くなるほど引かれる金額も多くなります。
年収1200万はすごい?勝ち組?割合を調査
世帯年収が1,200万円ある家庭の割合は、全体の2.1%です。また、どのくらいの年代で年収1,200万円を超えることができるのか、知りたい方もいるでしょう。ここでは、30代、40代、そして女性で年収1,200万円の方の割合を紹介します。
30代の年収1200万の割合
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、30代の男性で年収1,200万円代なのは、全体の0.1~0.2%です。30代前半で0.1%、30代後半で0.2%です。
1,000人に1~2人の割合ですが、決して「滅多にいないほど珍しい」というわけではありません。また、20代で年収1,200万円になっている方はほぼ0なので、30代になると年収1,200万円を超える人が現れはじめる、とも言えるでしょう。
40代の年収1200万の割合
40代前半で年収1,200万円に到達する方は全体の0.3%、40代後半で年収1,200万円に到達する方は全体の0.4%です。この年代の平均年収が360万~390万円なので、ほぼ3倍~4倍稼いでいる方といえます。
30代より0.1~0.2%上がっていますが、劇的に増えているわけではありません。40代になると会社でも責任ある立場に就く方も増え、給与が上昇していく人も多いでしょう。
それでも、年収1,200万円になれる方はほんの一握りです。一方、50代になると1,200万円代の年収がある方は0.6%まで増えます。
女性の年収1200万の割合
女性の場合、出産や育児で男性よりも順調にキャリアを築きにくい傾向がまだ続いています。そのため、「令和元年賃金構造基本統計調査」では、女性の最高年収は1,000万円~となっています。
30代では0.1%、40代前半で0.2%、40代後半で0.3%という結果なので、年収1,200万円を超える方はかなり少ないといえます。それでも、現在20代の方は女性でもキャリアが築きやすい環境が整ってきました。
これからは女性でも年収1,200万円以上の方も増える可能性が高いです。
年収1200万を稼ぐには?目指せる職業を紹介
年収1,200万円を稼ぐには、職業選びも大切です。給与が高い職業というと、医師や弁護士をイメージする方も多いでしょう。ここでは、年収1,200万円を目指しやすい職業に就いて解説します。
医師やパイロットは年収が高い
年収が高い職業のトップは、パイロット(航空操縦士)と医師です。パイロットの平均年収は約1,695万円、医師の平均年収は約1,192万円です。
パイロットや医師になるまでには航空大学校や大学の医学部に入学し、所定のカリキュラムを修得しパイロットの免許や医師免許を取得しなければなりません。
「年収が高いから」と別の職業から即転職するのはとても難しく、10代のうちから進路を決めて計画を立てて努力する必要があります。その一方で、無事に医師やパイロットになれれば、出世のためにがむしゃらに努力をせずとも一定の年収は得られます。
士業の年収はどのくらい?
医師やパイロットと同じくらい所得の高いイメージがある職業としては、弁護士や公認会計士、税理士といったいわゆる「士業」が挙げられます。
弁護士の平均年収は約729万円、公認会計士や税理士の平均年収は約684万円と平均年収よりは高めですが、1,000万円には届きません。しかし、弁護士や税理士、公認会計士にはいろいろな働き方があります。
例えば、弁護士は企業の顧問弁護士になったり、自分で事務所を開いて大口の顧客を掴んだりすれば、高い年収を得られる可能性があるでしょう。
税理士や公認会計士の場合は、税や財務の知識を活かしてコンサルティング業務を行ったり、コンサルティング会社に勤めたりすると、年収が高くなる傾向です。また、士業は定年がないので定年を超えても働けるのがメリットです。
サラリーマンで年収1200万円を超えるには?
東洋経済オンラインが発表した平均年収が高い会社を見てみると、1位がM&Aキャピタルパートナーズ、2位がキーエンス、3位がヒューリック、5位が伊藤忠商事となっています。
1位から5位までの平均年収は1,500万円を超えており、中でも1位のM&Aキャピタルは平均年収が約2,790万でありながら、平均年齢は約32歳です。年収が高い会社に入社したからといって即年収が1,200万円を超えるわけではありませんが、チャンスは十分得られるでしょう
また、近年は規模が大きな会社も積極的に中途入社の社員を募集しています。狭き門ではありますが、年収をアップしたい場合は会社内での出世だけでなく、スキルやキャリアを活かして転職も考えるのがおすすめです。
年収1200万の人におすすめの節税対策
年収が1,200万円になると、課税所得額によっては所得税の税率が33%になります。また、子どもや配偶者がいても、扶養控除や児童手当などが所得の上限によって受けられない場合もあります。つまり、年収は上がったが手取りは上がらないといったケースも珍しくありません。
少しでも節税するには、課税所得を下げる必要があります。ここでは、年収1,200万円の方におすすめの節税対策をご紹介します。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすることによって合計寄付額から2,000円を引いた額について、所得税の還付、住民税の控除を受けられる制度です。
通常の寄付と異なり、返礼品が受け取れるのも魅力です。返礼品には、地域の特産品からティッシュやトイレットペーパーなどの日用品、旅行券など多岐にわたります。
年収が1,200万ならば、家族構成などにもよりますが30万円程度は寄付が可能です。うまく利用すれば生活費や娯楽費の節約にもなるでしょう。
iDeCo・新NISAを利用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は私的年金の一種で、自営業だけでなく会社員や専業主婦の方でも利用できます。iDeCoを利用すると掛金が全額所得控除となるのも大きなメリットです。
生命保険や地震保険の控除などもありますが、もう少し控除を増やしたいといった方にも適しています。また、iDeCoは私的年金なので転職しても影響がありません。
また、新NISAは政府が推奨している低リスクな投資で、運用益が一定額非課税です。定期預金をしてもほとんど利息が付かない現在は、高所得者ほど投資をして資産を増やそうと考える方が多い傾向です。
しかし、一般的な投資は運用益が課税対象です。新NISAを利用すれば、課税を気にすることなく長期にわたって低リスクで資産運用ができます。
不動産投資を行う
不動産投資は、低リスクで長期にわたって利益を確保しやすい投資として幅広い世代に人気があります。
不動産投資のメリットは、利回りの良い物件を購入できれば管理を不動産会社などにすべて任せられることです。年収1,200万円になると仕事が多忙な方が大部分です。
株式投資や暗号資産投資など、短期間に大きく値段が動くような投資は本業の妨げになる場合もあります。その点、不動産投資ならば一度購入してしまえば、収支をチェックするだけで良いといった物件も多数あります。
不動産投資のデメリットとして初期費用が多くかかる点が挙げられますが、年収1,200万円の方ならば、頭金を貯めてローンを組むのも問題なく行なえるでしょう。
また、不動産投資は補修や清掃などで赤字になった場合、本業の収入と併せて確定申告をすることで所得税を下げられます。子どもや配偶者に相続させる場合も現金を相続させるより相続税を抑えられます。
不動産投資には代表的な賃貸物件への投資のほか、駐車場、コインランドリーなどさまざまな種類があります。内容を選べば初期投資も抑えられ、節税対策にも有効です。
年収1200万の人の手取りに関するよくある質問
最後に、年収1,200万円の方の手取りに関するよくある質問を紹介します。
会社員で1200万円の場合、税金は天引きされるので節税は難しいのでしょうか?
いいえ、会社員でもふるさと納税の利用、不動産投資の実行などで節税が可能です。特に、まとまった貯金がある場合は一部は新NISAやiDeCoに回し、残りを不動産投資に利用すれば、課税所得を大幅に減らせる可能性があります。
年収1200万円を超えたら扶養控除を一切受けられなくなりますか?
いいえ、年収1,000万円を超えた場合、無くなるのは配偶者控除や配偶者特別控除です。子どもや親、兄弟を扶養に入れた場合、扶養控除を受けられます。したがって、子どもが大学生になった場合付与控除が受けられて所得税が下がるご家庭もあるでしょう。
また、子どもが20歳になると国民年金の支払い義務が生じますが、そのお金を親が払うことで所得控除が受けられます。また、扶養家族が払った医療費用が年10万円を超えると医療費の控除も受けられます。
自営業のほうが節税はしやすいでしょうか?
自営業のほうがサラリーマンよりは節税しやすいのは事実です。しかし、確定申告に疑わしい点がある場合は、税務署から調査が入って追徴課税が課せられる場合もあるでしょう。自営業で高収入が見込まれる場合は早い内から税理士に相談し、適格に確定申告を行ってください。
まとめ:年収1200万の人は節税対策が必須
年収1,200万円を超えると所得税も33%になる場合があるなど、税金も上がります。また、配偶者控除や児童手当が受けられないなどのデメリットもあり、「思ったほど手取りが多くない」とがっかりする方もいるかもしれません。
しかし、不動産投資などを行って節税対策をすれば、手取りを増やすことも可能です。所得が高くなるほど節税対策は大きな意味を持ってきます。自分でできる対策から始めてみましょう。