投資物件の購入を検討するにあたって、地震によるマンション倒壊のリスクが頭をよぎった人も多いのではないでしょうか。
地震大国日本では、常に地震のリスクと隣り合わせの生活を強いられます。地震が多い地域ではなおさらのことでしょう。万が一地震でマンションが倒壊してしまった場合、ローンの残債はどうなるのでしょうか。
本記事では、大きな地震が発生した時のマンション倒壊リスクや、地震に対する備えについて、詳細を説明しています。不動産投資において、地震リスクが気になる人は、ぜひ記事内容をご確認ください。
マンションが地震で倒壊してしまう可能性は?
マンションのような巨大な建物が地震で倒壊してしまうことはあり得るのでしょうか。
マンションが地震で倒壊してしまう可能性について、三つのポイントにて説明します。
- 旧耐震基準と新耐震基準によって異なるリスク
- 築年数の古さとメンテナンスの有無が明暗を分ける
- 耐震構造と免震構造の違い
旧耐震基準と新耐震基準によって異なるリスク
マンションが建てられた年によって、倒壊の可能性は大きく異なります。新耐震基準に則って建てられたマンションは震度6〜7程度の地震でも倒壊しないように設計されていますが、旧耐震基準のルールで建てられたマンションは、震度5程度までしか耐えられないように作られています。
実際に阪神・淡路大震災や熊本地震では、双方の耐震基準ではっきりと耐震性の強さが現れました。
新耐震基準よりも旧耐震基準の方が壊れやすいのは、統計上でも明らかになっています。
旧耐震基準と新耐震基準
旧耐震基準と新耐震基準の違いを一覧表にまとめました。
1981年5月以前に建てられたマンション | 旧耐震基準。震度5程度の揺れで倒壊しないように設計されている |
1981年6月以後に建てられたマンション | 新耐震基準。震度6~7程度の揺れで倒壊しないように設計されている |
想定収益の兼ね合いから旧耐震基準物件を選ぶ場合、耐震診断を実施の上、適切な耐震改修を行いましょう。
築年数の古さとメンテナンスの有無が明暗を分ける
前述の通り、古いマンションは地震で倒壊する可能性が高まります。1981年6月以後のマンションは新耐震基準で建てられていますので、おおよそ40年を超えるマンションはリスクが伴う、ということになります。
また、鉄筋コンクリートに定められた耐用年数は47年です。旧耐震基準と相まって、築50年に迫るほどの古いマンションはより倒壊のリスクが高いです。
地震の揺れを減らす免震装置があるマンションでも、定期点検やメンテナンスを怠っていると地震による倒壊のリスクが高まります。築年数の古さも去ることながら、メンテナンスを全くしていないマンションも倒壊のリスクが高いと考えて良いでしょう。
耐震構造と免震構造の違い
倒壊に至らないまでも、中高層マンションでは長周期地震動が建物にダメージを与えることがあります。
長周期地震動とは、ゆっくりとした大きな揺れが長く続く地震動のことをいいます。東京や大阪、名古屋など堆積層の厚い平野部で大きな影響が出やすいと考えられており、さらに60m超えの超高層建築物はさらに大きな影響を受けるでしょう。
長周期地震動への備えとして、建物への影響を和らげる免震構造の有無は建物へのダメージを緩和するポイントの一つです。免震構造は、建物自体が地震と同期して動くように作られているため、建物自体が軋んでダメージを受ける可能性が低くなります。
マンション倒壊のリスクを避けるために、ぜひとも知っておきたい建物構造の一つです。
マンションが地震で倒壊したらローンはどうなる?
所有するマンションが地震で倒壊してしまった場合、ローンの残債はどうなってしまうのでしょうか。
災害時のローンの扱いについて説明します。
- マンションが倒壊してもローンは残る
- 例外的に減免されることも
マンションが倒壊してもローンは残る
残念ながら、大地震によってマンションが倒壊してしまった場合でも、ローンの残債は免除されません。住むことを目的とした住宅ローンでも同じ扱いです。
住宅ローンや不動産投資ローンなどの借入金は、あくまでも物件の購入費用の融資であり、物件の保険ではありません。そのため、地震などの自然災害で物件が倒壊した場合でも、借入金の返済義務は残ります。
例外的に減免されることも
ローンの残債は、基本的に免除されませんが、場合に応じて例外もあります。2011年に起きた東日本大震災では、多くの建物が倒壊し車も津波で流され、想像を超える災害となったため、例外的に減免が認められました。
規模の大きな激甚災害では、私的整理に関する特例が施行され、法的な手続きを経ることなく借り入れの減額や免除が認められます。
私的整理によるガイドラインで認められる特例の一例は次の通りです。
- 信用情報機関への登録を避けられる
- 手続きを支援する「登録専門家」を無料で利用できる
- 500万円までの預貯金を保有できる
- 私的整理によるガイドラインでは、通常の自己破産では認められない内容を例外的に認める内容となっています。
マンションの地震で入居者が被った損害をオーナーが賠償する責任はある?
地震でマンションが倒壊してしまった場合、入居者が受けた被害はオーナーの責任となるのでしょうか。オーナーとしては気になるところです。詳細を2つのポイントにて説明します。
- 建物の齟齬があった場合にオーナーがとる責任
- 老朽化をそのままにしていた時にオーナーがとる責任
建物の齟齬があった場合にオーナーがとる責任
地震は自然災害なので、オーナーには責任がない様にも思えますが、オーナーに過失がない場合でも、入居者が受けた被害の責任を負う可能性はあります。
民法717条1項の工作物責任にて、責任の所在が規定されています。
工作物責任とは、工作物(建物、橋、道路など)の設置又は保存に瑕疵(欠陥)があり、それによって他人に損害が生じた場合、工作物の所有者や占有者が損害賠償責任を負うというものです。
地震でマンションが倒壊した場合、倒壊の原因が建物の欠陥によるものである場合において、オーナーは工作物責任を問われる可能性があります。
具体的なケースは次のとおりです。
- 建物の設計や施工に不備があった場合
- 建物の耐震性が不足していた場合
- 建物の定期的な点検や修繕が不十分だった場合
入居者が損害を食い止めるために必要な注意や行動を取らなかった場合、オーナーの責任は減額されるケースもあります。
その時の状況によって、責任の範囲が大きく変わります。過去のケースを参考とするのは難しいでしょう。
老朽化をそのままにしていた時にオーナーがとる責任
前項の話の続きとなりますが、工作物責任によって、マンションの老朽化をそのままにしていた場合は、オーナーの責任が大きくなる可能性が考えられます。
マンションの老朽化をそのままにしておくと、建物の耐震性が低下し、地震などの自然災害で倒壊リスクはより高くなるでしょう。
また、地震による倒壊以前の話として、老朽化が進むことで建物の設備や内装が劣化すると、入居者の安全や生活の質が損なわれます。メンテナンスを怠ることは、不動産運営の成果にも大きな影響を及ぼします。
古いマンションのオーナーになった時は、耐震性について確認をしておいた方が良いでしょう。修繕や改修を行うことで、建物の安全性や入居者の安全・生活の質を向上させ、万が一の時のオーナーの責任を軽減できます。
マンションオーナーが地震リスクに備える方法
オーナーとして事前にできる地震リスクへの対策を4つ紹介します。
- 新耐震基準に合致する建物を選ぶ
- 旧耐震物件は耐震診断を実施
- 複数の地域に保有物件を分散させる
- 地震保険への加入
新耐震基準に合致する建物を選ぶ
前述のとおり、1981年の6月以降に建てられた新耐震基準に適合する物件を選ぶと、倒壊する可能性を抑えることができます。可能性をゼロにすることはできませんが、可能性を抑える効果は十分に期待できるでしょう。
古いマンションの購入を検討する場合、耐震補強費用の捻出を検討する必要があります。
旧耐震物件は耐震診断を実施
旧耐震物件をすでに保有している場合、耐震診断を実施して、耐震改修の必要性があるか判定しましょう。L字型やコの字型、細長い建物は特に地震に弱いと言われています。年数が古い旧耐震物件であれば、耐震診断と耐震改修は必須でしょう。
耐震診断は、旧耐震基準に沿った建物の耐震性が十分にあるかどうかを判断する検査です。現地調査や図面をもとに構造性能を求め、目標耐震性能と比較して必要があれば耐震改修を検討します。
耐震診断は一級建築士が所属する建築事務所へ依頼するのが一般的ですが、市役所などで相談することもできます。
複数の地域に保有物件を分散させる
物件を購入するときは、一つのエリアに集中せずにできるだけ分散して購入しましょう。
たとえ比較的地震に強い構造の建物でも、軟弱な地盤や埋め立て地の場合、地震の揺れや液状化現象によって建物が傾いてしまうケースも考えられます。
また、いつかは起きると言われている首都直下地震の予想では、関東の中でもエリアによって想定される被害に差があります。
木造の建物が密集している地域では地震時の火災リスクが大きくなりますし、同じ関東であっても津波の被害が想定される地域は限定的です。
投資する物件のエリアは分散させた方が災害リスクに対応しやすくなります。
各自治体が公表しているハザードマップは良い情報です。投資物件を検討する際には存分に活用しましょう。
地震保険への加入
不動産投資物件を購入するにあたって、地震保険への加入は必須です。予測できないリスクに対して万全の対策を講じておきましょう。
不動産を所有するオーナーが加入するべき不動産は次の3つです。
- 地震保険
- 火災保険
- 施設賠償責任保険
地震保険と火災保険
地震保険とは、地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。
大規模な地震が発生した場合、建物や家財の損害は甚大な被害をもたらします。地震保険は、そうした地震による損害に備えるための保険です。
地震保険は火災保険とセットで加入します。火災保険単独では地震による損害は補償されません。
地震保険の保険金は、損害の程度によって次の様に分類されます。
全損 | 地震保険金額の100% |
大半損 | 地震保険金額の60% |
小半損 | 地震保険金額の30% |
一部損 | 地震保険金額の5% |
損害の程度が一部損に満たない場合、保険金の支払いはありません。地震保険の保険料は、地震保険金額と建物の所在地によって決まります。
地震保険金額が大きく、地震のリスクが高いと想定される地域では、保険料も高くなります。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険とは、施設の所有者や占有者が、その施設の欠陥や業務遂行中の事故によって、他人にケガや損害を与えた場合に、その損害を補償する保険です。
投資物件のオーナーは、地震保険と合わせて加入しておきましょう。
施設賠償責任保険の補償対象は、次のとおりです。
- 対人賠償:他人にケガを負わせた場合の損害
- 対物賠償:他人の財物を壊した場合の損害
- 弁護士費用:損害賠償請求の際に必要な弁護士費用
店舗やホテル、イベント会場などの運営の際に加入することが多い保険ですが、土地工作物責任という無過失責任を負う不動産投資の際にも有効な保険です。
施設賠償責任保険に加入しておくと、万が一、施設の欠陥や業務遂行中の事故によって他人にケガや損害を与えた場合でも、その損害が補償されます。
施設賠償責任保険は、火災保険とセットで加入することもできます。
マンションが地震で倒壊したらローンはどうなる?まとめ
地震によってマンションが倒壊した場合、ローンの残債は免除されることなくそのまま支払いは続きます。
「地震対策を怠ったせいで、ローンの残債だけが残ってしまった」という事態を回避すべく、できる対策はしっかりと実施しておきたいところです。
基本的な対策は、新耐震基準の建物に絞って購入を検討すること、地震保険などしかるべき保険へ加入しておくことなどがあげられます。
「準備を怠ったせいで余計な負債を抱え込んでしまった」という事態に陥らないよう、事前にしっかり対策しておきましょう。