不動産投資ローンの金利相場は?選び方や安い金利でローンを組む方法

不動産投資ローンの金利相場は?選び方や安い金利でローンを組む方法

不動産投資を検討するにあたって、不動産投資ローンはきってもきられない縁。

不動産投資ローンを利用して年収の何倍もの借り入れをし、レバレッジを効かせられることが不動産投資の魅力であり、現金一括で購入する人は極少数の世界になります。

そんな不動産投資において、ローンを検討する際に大事になってくるのが金利の選択です。

不動産会社や金融機関に勧められるがままにローンを組んでしまうと思わぬ利息を支払うことになりかねません。

本記事では不動産投資を検討している方向けに実際の金利相場や選び方、また安い金利でローンを組むための方法を初心者の方でもわかりやすく解説します。

目次

不動産ローンとは

不動産投資ローンとは不動産を投資目的で購入するために利用するローンのことを言います。

アパートローンという呼び名でアパート購入向けに作られたローン商品もあるので投資用不動産というとアパートやマンションがイメージが強いですが、一戸建てやマンションの1室(区分マンション)でも投資用不動産として購入するのであれば同じ不動産投資ローンとなります。

不動産の購入には相応の資金が必要であるため、物件を購入するにあたっては不動産投資ローンを使うのが一般的です。

住宅ローンとの違いは?

不動産用のローンと聞くと住宅ローンを思い浮かべる方が多いと思いますが、不動産投資ローンとは目的が明確に違います。

住宅ローンは「自分が住むための住宅(居住用不動産)の購入」を目的とした借り入れです。

返済は「毎月の給与」を原資としており、個人年収の5〜6倍、属性次第で7〜8倍が借入上限の目安となっています。

また、住宅ローンは貸し倒れリスクが少ないことから金利も比較的低めに設定されています。

「支払えなかったら家がなくなる」ことから真っ先に返済をしようとするため、貸し倒れリスクが低くなっているでしょう。

一方で不動産投資ローンは「投資用不動産の購入」を目的とした借入で、返済の原資は「家賃収入」を原資とし、借入額は7〜10倍と高くなっており、属性や物件次第で20倍になることも。

しかし、住宅ローンと比較すると金利は少し高めに設定されているので、多く借りられるからといって良いというわけではありません。

また、家賃による収益性を主にみている為、70歳以上の高齢の方も融資を受けられるのも特徴のひとつです。

住宅ローン不動産投資ローン
目的居住用不動産投資用不動産
返済原資給与家賃収入
金利変動金利で0%台~
出典:価格.com 住宅ローン一覧
1.0%~7.0%
借入可能額年収の5~6倍年収の7~10倍

住宅ローンで投資用不動産は購入できる?

住宅ローンで投資用不動産の購入は不可です。

金利が安いのであれば1回自分で住むことにして住宅ローンで購入してしまえば?そんな発想が出てくる人もいるかと思いますが、事実としてその発想をそのまま提案してくる悪質な不動産業者もいます。

しかしこれは本来の目的以外の利用として住宅ローンの規約違反行為にあたります。

投資用不動産であることがばれてしまった時点で銀行からは一括返済を求められることになりますので注意しましょう。

不動産ローンの金利相場は?

不動産ローンにおける金利は不動産運営コストとして重要なポイントです。

結論としては金融機関や属性、物件の収益性や資産価値により異なるというのが答えですが、一言で「お金を借りる」と言っても金融機関により、融資の姿勢や金利相場は異なります。

金融機関金利相場銀行例
都市銀行1.0%~1.5%三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行
地方銀行/信用金庫1.5%~4.5%スルガ銀行、静岡銀行、きらぼし銀行
ノンバンク2.5%~7.5%オリックス銀行、セゾンファンデックス
日本政策金融公庫1.15%~2.8%

都市銀行

いわゆるメガバンクです。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行にりそな銀行を加える場合もあります。

全国区であるため、居住エリア、物件エリアに左右されることなく誰でも融資対象で、金利が1.0%〜1.5%(変動金利)と低くなっていますが、審査が非常に厳しいことが特徴です。

そもそも不動産投資ローンに積極的ではない傾向があり、年収や資産など属性や事業実績がないと借入は難しく、不動産投資をこれからはじめるという方にはかなり難しくなっています。

出典:アパートローン:三井住友銀行

地方銀行・信用金庫

地域密着経営で都道府県名や地域名が名称になっていることが多く、都市銀行に比べると金利は1.5%〜4.5%と高めの設定になっていますが、不動産投資初心者でも融資がおりやすいのが特徴です。

金融機関により不動産投資ローンに積極的なところとそうでないところがはっきりしています。

一方で地域の人の利用に積極的である故、物件が銀行の営業エリアにあることや所有者が営業エリア内に住んでいる、地元であることが条件となるケースもあるので事前に融資条件の確認が必要です。

出典:スルガ銀行:投資用不動産ローン

ノンバンク

言葉の通り、銀行ではない金融機関のことを指します。

銀行のようにお金を預かる業務をしないクレジット会社や消費者金融などでお金を貸すことに特化しています。

審査は通りやすく、早く審査が進む傾向がありますが、金利は2.5%〜7.5%と高めの設定となっていることが多いです。

出典:オリックス銀行│不動産投資ローン

日本政策金融公庫

日本政府が100%出資する株式会社で起業家の事業資金の融資を積極的に行っていて、あくまで事業資金の融資という名目のため、不動産賃貸事業として申込をします。

金利が1.15%〜2.8%とメガバンクに近い水準で、固定金利のみの取扱いですが、返済期間が民間より短く、最長でも20年程度となっているため、毎月の返済額が大きくなるので注意が必要です。

出典:日本政策金融公庫│新規開業資金

不動産ローンの2種類の金利

不動産投資ローンは変動金利と固定金利の2種類あり、それぞれメリット、デメリットがあるため、どちらが良いとは言い切れません。

返済計画に影響が出ますので、それぞれの特徴をよく理解した上で、資産状況や経営計画に合わせて慎重に検討が必要です。

不動産ローンの変動金利

変動金利は経済状況などにより、返済期間中も原則定期的に金利が見直される契約です。

一般的に景気が良いとされる局面では金利が高くなり、景気が悪いとされる局面で金利が低くなる傾向がありますので、景気の下降局面では変動金利が有利と言われます。

1.5%の低金利で借りられたとしても数年後に2%に見直されると以降は2%で利息が計算されることになるでしょう。

但、返済額が半年、1年ごとに毎回あがるということはなく、以下のルールが設定されています。

  • 5年ルール:半年ごとに金利は変わっても返済額は5年に1度しか変わらない
  • 125%ルール:前回の返済額の125%までしか返済額は増えない

極端な上昇を防ぐためのルールではありますが、逆を言えば5年後に返済額が1.25倍になる可能性はあるということでもあるので、借入時のシミュレーションは上昇率も考慮してしっかりと行ってください。

不動産ローンの固定金利

固定金利は借入時に適用された金利が完済時まで変わらない契約です。

景気の上昇局面で金利があがってきても毎月の負担が増えることはなく、総返済額を固定することが可能です。

返済が安定するように見えますが、変動金利に比べると元々の金利設定が高めに設定されているため、金利が安定している時期や下降局面に突入すると結果として総額が高くなってしまいます。

変動金利と固定金利の違い

返済期間中に金利の変更があるかないかが基本的な違いですが、そもそも金利を決める基準が違います。

変動金利は短期金利が基準になります。短期金利とは1年未満の期間の金利で代表例は政策金利です。

政策金利は日本の経済の実態をみて決めるので、結果として変動金利は「現在」を反映した金利となります。

◆用語解説◆
“政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利(誘導目標金利)のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を及ぼします。”

出典:三菱UFJ銀行│政策金利とは

一方で固定金利は長期金利が基準です。長期金利とは1年以上の期間を定めた融資の金利で利率を決定するのが10年物国債の利率となります。

10年物国債とは発行から償還までが10年となる国債のことで、長期の目線で決定した利率です。

そのため、固定金利は「将来」を予測した金利となります。

不動産投資ローンの金利の今後

変動金利においては政策金利が長らく低い水準を継続していると言えますが、固定金利を決める10年物国債の利回りの推移の通り、やや上昇傾向。

変わらず低水準ではありますが、今後も上昇していく可能性があると言える状況です。

出典:楽天証券│日本国債10年 年利回り

日本は国の政策により低金利を維持してきましたが、2022年12月に国債の金利変動幅を0.25%から0.50%に変更し、事実上の利上げをしています。

世界的な物価高は日本も例外ではなく、今後も利上げの可能性は十分に考えられます。

不動産投資を検討するにあたっては変動金利と固定金利どちらにするべきかの判断は今後の動向を注視する必要がありそうです。

不動産ローンで変動金利を選ぶメリット・デメリット

では、不動産ローンで変動金利を選んだ場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

変動金利のメリット

  • 金利水準が低く設定されている
  • 返済額が下がる可能性がある

金利水準が低く設定されている

固定金利に比べて、金利が低い設定になっているため、低金利が続く場合は支払う利息が少なくなります。

仮に低い水準が継続すれば結果として支払総額も安くなります。

(参考)
3,000万円を30年で借入。金利が変わらなかった場合の返済額の差。

金利毎月の返済額総支払額
1.5%103,536円/月37,272,960円
2.5%118,536円/月42,672,960円

金利が1%違うだけで毎月の返済額が1万円以上、支払総額になると500万以上の差になります。

返済額が下がる可能性がある

金利に連動しますが、見直しの際に金利が下がれば毎月の返済額が下がる可能性があります。

返済額が下がると更に総支払額も下がりますので運用コストを抑えることが可能です。

変動金利のデメリット

  • 返済額が多くなり、返済が困難になる可能性がある。
  • 経営計画が立てづらくなる

返済額が多くなり、返済が困難になる可能性がある。

125%ルールによる返済額の制限があるものの、金利には上限がありません。

利息は返済額から先に引かれるので、金利が上がり続けることで元金の減りが遅くなる他、未払い利息が発生することで総支払額そのものが増えてしまう可能性があります。

◆用語解説◆
“未払い利息とは、変動金利型ローンで金利が上昇した場合、返済額を上回って未払いとなる利息のことです。”

出典:【ホームズ】未払い利息とは?

経営計画が立てづらくなる

不動産経営は利息以外にもリフォームやメンテナンスなど様々なコストがかかります。

特に大規模修繕と言われる外壁塗装や防水工事など10年~15年に1回程度の頻度で発生する工事に多額の費用がかかるため、不動産経営においてはしっかりと積立をし、計画をたてておくことが必要です。

しかし、返済額が増えることで積立を圧迫し、経営計画に影響が出てしまう可能性があります。

不動産ローンで固定金利を選ぶメリット・デメリット

次に固定金利を選んだ場合のメリット・デメリットを紹介します。

固定金利のメリット

  • 毎月の返済額が確定しているため、経営計画が立てやすい
  • 金利上昇局面でも支払額が変わらない

毎月の返済額が確定しているため、経営計画がたてやすい

借入時に金利が確定し、毎月の返済額が支払期間中同じであるため、返済額増加による経営計画修正の懸念はありません。

結果、入退去対策や修繕積立などだけを考えることに集中して運営していくことが可能となります。

金利上昇局面でも支払額が変わらない

将来の金利を完璧に予測することは困難ですが、固定金利の場合はどんなに金利が上昇しても、借入時に決定した返済額は変わりません。

金利が低いときに固定金利で借入をしていれば最終的な負担は小さくて済みます。

固定金利のデメリット

  • 金利水準が高く設定されている
  • 市場金利が下がっても返済額は下がらない

金利水準が高く設定されている

そもそも固定金利は変動金利に比べ、金利水準が高く設定されているため、これくらいなら低いと思って選択した金利も下降トレンドにおいては高い金利扱いになってしまう可能性があります。

また、返済期間が長くなると金利は高くなる傾向があるので借入期間と合わせて比較するようにしましょう。

市場金利が下がっても支払額は下がらない

金利上昇トレンドでも支払額があがらないということは、裏を返せば金利下降トレンドでも支払額は変わらず、下がらないということです。

金利が下降トレンドになった場合は結果として支払総額が多くなってしまいます。

当初固定金利という選択肢

固定金利期間の特約がついた契約形態で、当初固定金利というものがあります。

固定金利期間は2年や5年など短期のものから10年、20年と長期のものまで金融機関によって異なります。

不動産経営初期から安定を目指し、返済額固定で確実な積立を計画していきたい場合などに選択することは有効ですが、同時に変動金利へ移行後、金利の上昇の可能性に備えていく必要が出てくるので注意も必要です。

期限ありの固定金利は全期間固定の金利より安く、変動金利より高い場合が一般的となっています。

安い金利で不動産投資ローンを組む方法

借入先金融機関により一定の相場はあることを既にお伝えしましたが、最終的に金利を決定するのは「借入する本人の属性」と「対象物件の評価」です。

この2つにその時の経済状況や銀行の融資状況などの外部要因が加味されて決定していきます。

2018年頃までは個人投資家への不動産投資用融資は積極的でしたが、不動産投資における不正融資のニュースが大々的に報道されて以降、融資状況は厳しくなっているようです。

では、安い金利で不動産投資ローンを組むにはどのようにしたら良いのでしょうか。

変動金利を選択する

前述の通り、変動金利は固定金利よりも低い水準となっています。

安い金利を大前提とするのであれば将来的な金利変動があるというデメリットを十分に理解した上で変動金利を選択することが最もシンプルな方法です。

本人の属性を高める

借入の審査をする際、申込者の「属性」でこの人はしっかりと返済してくれる人かどうか信用度を確認します。

不動産投資ローンにおける属性とは主に下記を指します。

  • 年齢:将来的な年収の上昇期待、完済時も現役で働いているか否か
  • 年収:安定した収入か成果報酬など変動のある給与形態ではないか
  • 職業:勤続年数、個人事業主か会社員か、スタートアップや上場企業などの企業規模
  • 居住状況:賃貸か持家か
  • 家族構成:扶養している家族の人数
  • 資産:株式や不動産、預金などの資産の所有状況、担保になるものはあるか
  • 借入状況:その他のローンの残債と支払い状況

働き方が多様化してきた現在でも金融機関は医師や弁護士などの一般的に高収入と言われる職業の他、収入そのものが安定している公務員、そして、会社員でも上場企業など企業基盤が安定しており、昇給していく可能性の高い会社員を優遇しがちです。

そうはいっても、明日から医者になろうと決めてなれるものではありませんし、基本給が高い会社に転職できたとしても勤続年数も評価項目としてチェックされます。

融資の相談と転職や独立検討が並行している場合は、むしろ転職、独立前のほうが有利でさえあります。

事前に出来る対策としては借入状況の正常化です。

借入の中でも「お金を借りるだけ」のカードローンや消費者金融は評価が下がる可能性があるため、完済できるものであれば完済をしておくことがおすすめです。

完済することでマイナス評価のローンが無くなると同時に、「完済履歴」が残るのでしっかりと返済してくれる人という評価もプラスされ一石二鳥となります。

自己資金を準備する

一般的に不動産購入時は物件価格の2割〜3割の自己資金が必要です。

自己資金が相応に準備できることは計画的な不動産購入であると判断され、金融機関からの評価もプラスになります。

頭金を支払うことでローンの月々の返済を軽減できるため、毎月の収支が改善され、変動金利においては金利変動の影響も小さくできます。

頭金にしなくても家賃収入以外の返済原資として残しておくことでリスク回避にも繋がります。

事業計画書を詳細に作成する

融資を受ける際の提出資料として事業計画書というものがあります。

不動産事業の事業計画書というと家賃収入から運営経費(支出)を差し引き計算して収益を算出します。

普通は不動産会社が作成してくれますが、金融機関に良く見せるために空室率(空き部屋の比率)や家賃の下落率をぎりぎりに設定していることが多いです。

もちろん空室率も家賃の下落も「絶対」は予測できませんし、厳しめに作り過ぎることで赤字物件になって融資を受けられなくなるのも問題です。

しかし、事業計画書をしっかりと作成することで金融機関の担当者に不動産収益以外の資産や収入で補えるかどうかの見通し判断してもらいやすく、破綻しない根拠をもって、計画性があることを示せれば評価してもらえるでしょう。

融資に強い不動産会社で購入する

不動産会社と金融機関は切っても切れない関係で、独自に提携しているケースがあります。

主に大手不動産会社や販売実績が多い会社は融資に強い不動産会社である可能性が高いです。

お客様の紹介を通して関係を築いてきた結果、融資に強く、金利以外にも貸し付け条件も含めて優遇が適用される可能性があります。

金利を低くしたい時は取引実績が多く、提携金融機関も幅広い融資に強い不動産会社を選びましょう。

複数の金融機関を検討する

金融機関により金利相場が違うとお伝えした通り、同じ金融機関であっても支店が違うだけで金利が違うことさえあります。

複数の金融機関に相談することで比較検討でき、最もよい条件(低い金利)で融資を受けられる可能性をあげられます。

何行も相談をする労力は必要になりますが、融資に必要な書類は基本的にほぼ一緒のため、事前に用意しておくことでスムーズに面談が可能です。

複数の金融機関で融資が下りた際は、合わせて金利以外の事務手数料や保証料も比較して不動産経営をスタートから優位に進められるように準備しましょう。

取引のある銀行に相談してみる

複数の金融機関を検討する際に既に取引のある金融機関に相談してみることも一つの選択肢です。

給与の入金実績や住宅ローンの支払い実績などが評価され、低い金利水準での借入に協力的な場合があります。

物件を見直す

購入物件の家賃収入がしっかりと見込めるのかどうかは金融機関の評価基準として非常に大事なポイントです。

目の前にある提案された物件、最初に選んだ物件だけに捕らわれず物件そのものを見直すことも検討しましょう。

物件の評価は築年数や立地の他、設備、リフォーム・メンテナンスの履歴など様々な項目を確認して判断します。

古い物件よりは新築、地方よりは都市部、駅から遠い物件よりは近い物件というように賃貸物件を探したことがある方なら家賃の差でなんとなく想像はつくかと思います。

更には将来的に近隣エリアの開発が決まっている、大手企業の工場がある、大学が近いなどの要因も評価に繋がります。

結果、金融機関から入居者ニーズが高く、家賃収入が見込める、収益性が高いと判断されると金利が安くなる可能性が高まるでしょう。

共同担保を検討する

不動産投資ローンにおける担保は購入物件の土地・建物が一般的ですが、所有している他の物件や自宅を担保として提供することが可能なケースもあります。

金融機関としては返済が滞った際の担保が増え、未回収リスクを避けられることから金利交渉の可能性が出てきます。

但し、自宅を担保にする場合は万一の際に家を失うリスクを伴うことになるので家族の同意も必要ですので、あくまで選択肢のひとつとしての検討としましょう。

年収別の不動産投資ローンの選び方

「借入する本人の属性」は金利、借入額の決定にあたって重要な要素です。

属性のなかでも借入額を決定づける参考基準が年収となります。

では、年収別でどのように不動産投資ローンを選ぶべきでしょうか。

【年収1000万円超】幅広い投資戦略が検討できる

2022年に発表された「令和3年 民間給与実態統計調査」によると年収1,000万円超は給与所得者全体の4.9%の上位層となります。

都市銀行も含めて、金融機関の融資も幅広く相談が可能なため、様々な金融機関へチャレンジが可能です。

出典:令和3年 民間給与実態統計調査

物件は一棟マンションや一棟アパートなどほとんどが対象となり、借入は1億かそれ以上も見込めます。

大きく収益を狙っていけるので、区分マンションでも複数戸所有するなど戦略の選択肢も増えるでしょう。

借入見込み7,000万円~
借入先都市銀行含む全ての金融機関
対象物件1棟RCマンション、1棟アパート、区分マンション複数戸

【年収700万円】一棟も検討可能

一定の勤続年数や役職についている人が多くいる層です。

価格帯によってはマンションやアパートの一棟にもチャレンジ出来る借入が見込めます。

頭金2〜3割の準備が可能で、不動産経営の実績や資産状況次第では1億円程度の物件も可能性が出てきます。

借入先は都市銀行にも相談は可能ですが、はじめての購入の場合はかなり厳しいケースも多く、地方銀行や信用金庫がメインとなります。

預金資産の積立と返済実績を伸ばしていけば2棟目、3棟目の融資も受けやすくなるでしょう。

借入見込み5,000万円~10,000万円
借入先主に地方銀行・信用金庫
対象物件1棟マンション、1棟アパート、区分マンション

【年収400万円】まずは実績作りで区分投資から

サラリーマンの平均所得といえる層がこの400万円〜500万円です。

頭金の準備が出来れば地方の1棟アパートなど5,000万円前後の物件も可能性はありますが、実績作りとしては区分マンションが向いています。

区分マンションを不動産ローンで買うことももちろん可能ですが、区分マンションはどうしても収益性が低く、資産形成が遅くなる為、現金一括や頭金を多めで購入してしまい、実績作りとすることで次の物件購入へ繋げていけるでしょう。

借入は1棟を狙う場合は地方銀行、信用金庫になりますが、区分マンションの融資に積極的な金融機関が少ないことからノンバンク系が相談先となります。

◆用語解説◆
“区分マンションとは、マンション内の1戸ずつの物件のこと。”

出典:建美家 不動産用語解説 区分マンション
借入見込み2,500万円~5,000万円
借入先地方銀行・信用金庫、ノンバンク
対象物件1棟アパート、区分マンション

不動産投資ローンを組む際の注意点

不動産投資は「投資」であり「事業」です。事業である以上は経営という側面を持っています。

金利が安かったから良い、融資額が多く出たから良いではなく、返済計画をしっかりとたてた上でローンを組む必要があります。

では、不動産投資ローンを組む際はどのような点に注意すれば良いでしょうか。

返済計画には余裕をもたせる

以前は物件購入時の自己資金ゼロで融資を受けるフルローンや銀行手数料や登記費用など諸経費を全てローンで支払うオーバーローンというものも多くありました。

現在も属性次第では不可能ではありませんが、ローン利用額が大きくなるとそれだけ返済額も大きくなります。

不動産経営は常に空室リスクを伴います。

購入時に空室リスクが低いと判断して物件を選んでも空室は必ず発生し、家賃収入が減る時期があるでしょう。

また、家賃自体も年数が経つとエリア情勢や競合物件と比較しながら、値下げを検討しなくてはいけません。

購入時の家賃収入からローンの返済額を差し引いた結果がプラスになっているだけで判断はせず、余裕をもって返済額や返済期間を決めましょう。

借入期間を長めに設定する

借入期間を短くすると当たり前ですが、利息の支払いは減る一方で月々の支払いが大きくなります。

利息の支払いを減らすことも不動産経営の検討事項のひとつですが、先述の通り収支バランスぎりぎりの返済プランは経営の圧迫に繋がります。

入居者の入れ替わりのタイミングにおける原状復旧工事やエアコン、給湯器などの設備交換費用の発生は避けられません。

時には思わぬアクシデントで費用が発生することもあることから、月々の負担を減らしておくことはリスクを軽減するための手段として有効と言えます。

借り換えを検討する際は要注意

現在の金融機関の借入を他の金融機関に乗り換えることを借り換えと言います。

市場金利が下落傾向の時には特に注目を浴びる手法で、高い金利から安い金利に借り換えることで支払総額を減らせるメリットがあります。

支払総額が減ることは良いことのようにみえますが、以前の借入先との関係を切る結果になるため、その後の融資において金融機関の評価が下がることもありますので不動産の買い増しを進めていく場合は十分検討の上、行うようにしてください。

不動産ローンの金利でよくある質問

Q.固定金利と変動金利どちらを選ぶべきですか?

一般的に経済の上昇局面では固定金利、下降局面では変動金利が良いとされています。

但し、経済情勢を正確に読み取ることは難しいため、支払年数や毎月の返済を固定したいなど、多面的に見た上で判断してください。

Q.金利が低く借りられるなら低いほうが良いですか?

総支払額が抑えられるという点で、基本的に低く借りられることは良いといえますが、借入の際は事務手数料などの費用が発生するため、トータルでいくら必要になるのかを計算しておくことが重要です。

Q.金利の相談は誰にするのが良いですか?

不動産会社をおすすめします。

金融機関に相談した場合はその金融機関の条件提案しか受けられませんが不動産会社は複数の金融機関と提携していることが多く、条件の良い金融機関を選択できる可能性があります。

Q.金融機関担当者との面談は金利に影響しますか?

影響する場合があります。

服装は個人の好みですが、金融機関の慣習は古く、スーツや清潔感のある身だしなみを好みます。

身だしなみが乱れていると生活も乱れている、お金にもだらしないのではないかと印象づいてしまう場合があり、極端な差にはならないものの最後の一歩で金利や借入額に差が出ることがあるでしょう。

Q.自己資金が多いほうが金利は下がりますか?

金利が下がる可能性があります。

初期費用は物件価格の2割〜3割が相場ですが、それ以上に自己資金があることは計画的な投資であると証明することになります。

頭金を入れることでローン支払額が減り、金融機関側としてもリスクが下がることから結果として金利設定に影響するでしょう。

Q.借入後に金利交渉は可能ですか?

原則借入後の一方的な金利交渉は難しい場合が多いです。

但し、借換えの検討を相談した際などに年収や資産状況のプラス材料がある場合において、交渉に応じてくれるケースはあります。

Q.数年後に借り換えした場合、金利は下がりますか?

金融機関の融資状況や経済市況により異なります。

経済の下降トレンドにおいては、金利が下がる可能性がありますが、借換えの際は現在の借入れ先への手数料や新たな借入先への事務手数料、登記費用などが発生するため、毎月の返済額が下がっただけで判断せず、総合的な判断が必要です。

まとめ

不動産ローンの選択に100%の正解はありません。

借入時の金利は各金融機関の相場のベースはありますが、最終的な判断は属性、物件などを確認の上で、総合的判断で決められます。

固定金利、変動金利どちらが良かったのか。

この判定は10年経っても20年経っても正解を見極めることは非常に難しい問題です。

仮に購入時の選択が間違いだったと気づいたとしても、購入時からやり直しというわけにもいきません。

経済情勢、金融機関の業況など金利のコントロールは決してできないものであるため、金利のトレンドをしっかりと見極め、事業計画をしっかり立てた上で金融機関、不動産会社と相談して自分にあった選択をしましょう。

繰り返しになりますが、不動産投資は「投資」であり「事業」でもあります。

物件を所有し続けるのか、途中で売却するのか。

金利は不動産経営におけるひとつの要素として考えながら運営していくことが重要です。

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