不動産投資に連帯保証人は必要?連帯保証人なしで融資を組む方法も解説

不動産投資に連帯保証人は必要?連帯保証人なしで融資を組む方法も解説

多くの不動産投資家は、融資を活用して不動産投資を行っています。融資の審査基準がはっきりしておらず、実際に融資が承認されるかは懸念されるところです。

また、融資と借金は同じものと見なされがちで、資金を蓄えてから不動産投資を始める方が安心だと感じる方もいるでしょう。

しかし、不動産投資には融資を活用することで得られる大きな利点が存在します。そこで、今回は不動産投資において連帯保証人の必要性や、連帯保証人なしで融資を受ける方法について詳しくご紹介いたします。

目次

不動産投資に連帯保証人は必要?

個人が融資を受ける際、通常は金融機関が連帯保証人を要求します。特に、債務者(契約者)の妻に連帯保証を求められることが一般的です。

連帯保証人が必要とされる理由は、債務者に予期せぬ事態が生じた際に相続人が必要となるからです。つまり、貸し倒れを最小限に抑えるために、連帯保証人を必要としています。

連帯保証人は債務者と同等の責任を負うため、その責任は非常に大きいです。このため、妻に連帯保証人になることに反対され、物件の取得を断念するケースも少なくありません。

特に不動産投資は金額が何千万、何億円にもなるため、妻の同意なしに進めることは、夫婦関係に悪影響を与える可能性があるため、おすすめできません

債務者(契約者)の妻の理解が得られないと、貴重な休日に物件を見学することや新しい知識を得るための勉強会に参加することが難しくなり、物件の購入まで進めることが難しくなります。

基本的に妻の同意を得た上で不動産投資は進めるべきであり、お互いに合意し納得した上でスタートすることが、その後の投資生活を円滑にします。

不動産投資の連帯保証人を含む民法が改正

2020年4月に施行された民法改正において、連帯保証人を含む保証人に関する法規が改定されました。この改正により、個人が根保証契約の保証人となる場合には、具体的に○○円とはっきり定める必要があります

なお、連帯保証人の個人根保証契約において極度額が設定されていない場合、その契約は無効となるでしょう。

同時に、公証人による保証意思確認の手続きが採用され、個人が保証人となりたい場合には、自ら公証役場を訪れ「保証意思宣明公正証書」を作成します。

この際、公証人は債務の内容や保証人としてのリスクを確認し、個人がそれを理解しているかどうかもチェックします。その後、証書に署名・捺印が行われることになるでしょう。

さらに、保証人には情報提供の責務が課されるようになりました。債務者が保証人に依頼しようとする際には、債務者の財政状況や収支状況、および他の債務に関する情報も保証人に提供する責務が発生します

民法が改正された後も、法定相続人を連帯保証人に指定することは可能ですが、これには煩雑な手続きが伴うでしょう。このため、メガバンクを含む多くの銀行が、原則として保証人不要で融資を行う姿勢を示し、他の金融機関も同様の方針を採用しています。

現状、アパート融資においては、基本的には連帯保証人が不要とされる傾向にあります。ただし、審査の結果次第では、引き続き法定相続人が1名以上連帯保証人となるケースも存在するようです。

不動産投資に連帯保証人が必要となるケース

不動産投資において、連帯保証人なしで対応できるケースと、連帯保証人が必要なケースがあります。金融機関によっては次のような場合、連帯保証人を要求されます。

  • 債務者の属性
  • 投資物件の収益性が低い場合

詳しく見ていきましょう。

債務者の属性

属性は一つひとつの単体ではなく総合的に評価され、主に以下の3つのカテゴリに分類されます。

  1. 収入(会社の規模・勤続年数・年収)
    会社が小規模であり、勤続年数が短い場合や契約・派遣社員である場合、おおむね年収が700万円以下のケースでは、連帯保証人が必要とされることが一般的です。契約者の将来の収入の安定性や収入の減少の可能性に基づいて、評価が行われます。
  2. 保有している自己資産
    銀行や信用金庫などの金融機関の口座にある預金や、所有している株式や有価証券、外貨や保険などは、自己資産として認められます。投資する人の年収や自己資金が充実している場合、金融機関は投資失敗に対しても融資の返済が可能であると判断しやすい傾向にあります。
  3. 家族構成
    家族構成によって月々の支出、子供がいる場合は学費など、様々な面が詳細に検討されます。加えて、連帯保証人となる妻の存在も考慮されます。

投資物件の収益性や資産価値が低い場合

不動産投資において、投資物件が安定的な家賃収入が見込めず、かつ資産価値が低いと判断されると、連帯保証人の要請が生じることがあります

収益性の低い物件を購入すると、空室が発生して家賃収入が途絶える可能性も考えられます。もしも家賃収入が得られない状況になれば、ローンの返済が難しくなるリスクが高まるでしょう。

このため金融機関は特に収益性を重要視しています。購入する不動産の資産価値が高いほど、その物件が融資の担保として機能し、連帯保証人がいらなくなるケースもあります。

不動産投資の連帯保証人は親・妻にお願いすることが多い

不動産投資の連帯保証人を誰にお願いするのか、というのはとても気になるところでしょう。一般的には債務者の親や妻にお願いすることが多いと言われています。

一部の金融機関では、「何親等以内の親族」と規定している場合もあるでしょう。

こちらでは、次の2つの項目に沿って解説します。

  • 連帯保証人は安定した所得のある親族にお願いするのが一般的
  • 友人でも可能な場合がある

さっそく、見ていきましょう。

連帯保証人は安定した所得のある親族にお願いするのが一般的

不動産投資ローンの返済は、基本的にはそのローンで取得した収益物件から得られる家賃収入が返済の元となります。このため、将来的にアパート経営を引き継ぐ可能性が高い人が連帯保証人として要求されます

この視点から、相続が見込まれる契約者の親や妻に頼むことが一般的です。なお、専業主婦で収入のない妻であっても、連帯保証人として指定することもできます。

万が一、ローンを借りた人が不慮の事態で亡くなった場合でも、親や妻を連帯保証人に指定しておけば、相続放棄をした場合でも家賃収入からローンを回収できる仕組みがあります

逆に、独身者や既に妻を亡くしている場合は、親や子供が連帯保証人として適しているでしょう。

友人でも可能な場合がある

もしも債務者に妻や子供、両親が不在で頼れる親族もいない場合は、友人などの他人でも連帯保証人になれます。ただし、友人に十分な収入があり、迅速にコミュニケーションがとれる相手であれば、友人である場合、認められることがあるでしょう。

連帯保証人には非常に重大な責任と大きなリスクが伴いますので、これを双方が十分に理解しておく必要があります。

不動産投資の連帯保証人になる人のリスク・注意点

前述しましたが、連帯保証人は主債務者と同様に返済責任を負います。返済が困難と判断されれば財産が差し押さえられる可能性もあるため、多くの人が連帯保証人になることに慎重な姿勢を示します。

そのため、近親者である妻や子供であっても、連帯保証人になることに躊躇するケースも珍しくありません。以下では、不動産投資の連帯保証人になる人に関する5つのリスクと注意点について詳しく説明します。

  • ローンの返済義務は残る
  • 物件の修繕費用や損害賠償も責任の範疇
  • 借主による家賃の滞納分を請求される
  • 賃貸借契約・連帯保証人を解除できない
  • 3つの権利を失う

ローンの返済責任は残る

債務者の妻が連帯保証人になっている場合、相続放棄は可能でもローン残債の支払いを放棄することはできません。連帯保証人として借金を返済する責任は、どのような状況であっても免れないため、この点には十分に留意が必要です。

また、離婚や旧姓への戻り、再婚によっても、連帯保証人の地位が自動的に解消されることはありません。契約内容においては、個人の状況変化は考慮されないとされています。

連帯保証人になる際は、事前によく物件の運営状況や収支をしっかり把握しておくことが重要と言えます。

物件の修繕費用や損害賠償も責任の範疇

物件に設置された設備が破損した場合の修繕費用や、建物の外壁などによる偶然な事故によって、家主が負わなければならない法律上の損害賠償費用の支払いにおいても責任を負います

ただし、前述した民法改正において、貸主の修繕義務についても見直しが行われ、借主の責任による修繕が必要な場合には、貸主が修繕義務を負わないことが法律で変更されました

賃貸借契約中に賃貸物が損傷した場合、原則として修繕は貸主の責任である点は改正後も変更されていません。ただし、もし損傷の原因が、不適切な方法で賃貸物を使用した場合によると、修繕は借主の責任となります。

同様に、賃貸借が終了する際には、原状回復・収去義務の規定が法的に確立されました。具体的には、借主は賃貸物を返却する場合に、損傷があれば修復し、賃貸物に関連する動産などが存在する場合はそれを取り外すという義務を負います。

この責務も連帯保証人の責任の範疇となります。

借主による家賃の滞納分を請求される

借主が家賃の支払いや更新料を滞納した場合、貸主は連帯保証人に対して支払いを要求できる点にも注意が必要です。主債務者が財産を有していたとしても、連帯保証人の財産が差し押さえられるケースも考えられます。

借主の支払い能力に関係なく、連帯保証人はこれを拒否する権利がなく、その責任の重大さを理解しておくことが重要です。

賃貸借契約・連帯保証人を解除できない

賃貸借契約は、基本的に貸主と借主との合意に基づくものであり、当事者ではない連帯保証人が賃貸借契約を解除することはできません

従って、一旦連帯保証人の契約が成立すると、借り手と急に連絡がつかなくなり家賃が滞納された場合でも、連帯保証人自身が簡単に賃貸借契約や連帯保証人を解除することはできません。

3つの権利を失う(催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益)

まず“催告の抗弁権”とは、金融機関が予告なしに連帯保証人に返済を要求しても、まずは債務者に対して請求できる権利です。

ただし、この権利は連帯保証人になると喪失し、急な返済要求に対して抗弁することができなくなります

次に“検索の抗弁権”ですが、これは保証人が債権者に対して、債務者が支払い可能な資産を有している場合に、保証債務の履行を拒否できる権利です。

しかしこの権利も、連帯保証人になると行使することはできません。従って、債務者が資産を所有している場合でも、連帯保証人であれば金融機関の請求に応じて支払うしかありません。

最後に“分別の利益”についてですが、これは連帯保証人が複数いる場合、各保証人が借金全額の支払いを負担するのではなく、保証人の数で均等に分担されるという権利です。

ただし、連帯保証人の場合、債権者が全額を要求しても、それを拒否する権利はありません。実質的には、融資を受けた本人と同じ責任を負うことになり、それは非常に重い責務であることを理解する必要があります

不動産投資に連帯保証人を立てずにローンを組む方法

こちらでは、不動産投資に連帯保証人を立てずにローンを組む方法を2つご紹介します。

  • 団体信用生命保険に入る
  • 法人設立をして融資を受ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

団体信用生命保険に入る

不動産投資ローンを利用する際に、連帯保証人を指定せずに進む手段として、団体信用生命保険(団信)に入るという方法があります

団信は、ローンの返済中に契約者が亡くなり高度障害状態になった場合、その後の残債が保険金によって弁済される仕組みを持つ保険です。

団体信用保険に加入すると、通常のローン金利に0.3%〜0.5%ほど上乗せされます。この保険に加入するためには、いくつか条件があります。

まず、ローンを利用する段階で71歳未満であり、完済時点で81歳未満であることが求められるでしょう。また、もう一つの条件は契約者の健康状態です。現在の健康状態について告知が必要で、この審査を通過して加入に至ります。

団信に入ることで、債務者が亡くなった場合でも家族は収益物件を所有し続け、そのまま家賃収入を受け取ることが可能です。

これにより、ローン契約者の家族は予期せぬ事態に備えながらも、安心して生活を継続できる保証が提供されます。

通常、団信の保険料はローン金利に組み込まれることが一般的であり、金融機関によっては融資条件として団信への加入が前提とされる場合や、選択肢として提供されるところもあるなど様々です。

法人設立をして融資を受ける

不動産投資ローンを連帯保証人なしで取得するもう一つの方法として、法人を設立し融資を受けるという手段があります。

通常、法人が不動産投資ローンを申請する場合、資産管理法人が借主となり、代表者が連帯保証人の立場を担い、配偶者など追加の連帯保証人は不要となります。

法人を設立し青色申告を採用する場合、税務上の欠損金を10年間にわたって繰り越したり、減価償却を選択したりするなどの利点があるでしょう。

ただし、法人を設立するには設立費用や税理士への報酬などランニングコストが発生しますので、これらを考慮した上で慎重に判断することが重要です。

創業段階では法人自体が信用を有していないため、代表者の信用が融資を受ける上での鍵となります。法人の融資枠を拡大するには、法人がしっかりと利益を上げ、最低でも3年間は黒字経営を続ける必要があるでしょう

法人の運営が順調に進むと、不動産投資ローンだけでなく、プロパーローンなどの事業資金融資を受けることが可能になります。

まとめ

今回の記事では、不動産投資の連帯保証人についての基礎的な知識から、連帯保証人なしで融資を組む方法も解説しました。

これまで不動産投資契約では通常、連帯保証人が必要であることが一般的でした。しかし、実際に賃料の滞納が発生しても、連帯保証人が資力不足である場合も多く、貸主にとっては連帯保証の有効性に疑問が生じるケースも多くみられました。

新たな民法改正により、保証契約の厳格化は軽率な契約を減少させ、保証人や連帯保証人となることによる予期せぬ負債リスクを防ぐ助けになります。

逆に、保証人制度を活用する場合、手続きの複雑化が懸念されるため、不動産投資を検討する際には融資が難しくなるといったケースも考えられます。

不動産投資にまつわる民法改正がありましたが、保証人制度自体が廃止されるわけではありません。将来にわたり、連帯保証人の必要性は続くと考えられるでしょう。

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