近年、新しい投資法として「ソーシャルレンディング」が注目を集めています。少額から投資ができる、チャートを小まめに確認する必要がないといったメリットがある一方、デメリットもあります。
「ソーシャルレンディングに興味があるが、リスクがどのくらい高いのか分からず不安だ」と悩んでいる方もいるでしょう。本記事では、ソーシャルレンディングの概要やメリット・デメリット、おすすめを紹介します。
ソーシャルレンディングの概要

はじめに、ソーシャルレンディングの概要や特徴、不動産クラウドファンディングとの違いについて解説します。ソーシャルレンディングに興味がある方や、投資を検討している方は参考にしてください。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、インターネットを利用して事業を起こしたい起業家と投資家を結びつけるサービスです。別名を「貸付型クラウドファンディング」ともいいます。
クラウドファンディングは、事業者がインターネットを利用して不特定多数から寄付を募って事業を行います。ソーシャルレンディングは不特定多数から資金を集めるという点では、通常のクラウドファンディングと同じです。
ソーシャルレンディングは不特定多数から集めた資金を起業家に投資します。投資家は返礼品の代わりに利息と元本から配当金を受け取る仕組みです。
ソーシャルレンディングは専門の事業者が投資家と起業家・企業とを仲介します。
資金が欲しい起業家や企業は、ソーシャルレンディング事業者に融資を申し込みます。一方事業者が提示した予定運用期間や金利など比較して、投資する事業を選ぶのです。
投資した事業がうまくいけば投資者は配当金を受け取れ、運用期間が終了したら投資した元本は返金されます。
ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの違い
ソーシャルレンディングとよく似た投資方法に、不動産クラウドファンディングがあります。不動産クラウドファンディングも、不特定多数の投資家がインターネットを通じて小口投資を行う点は共通しています。
その一方で、以下の2点がソーシャルレンディングとは異なります。
- 投資先は不動産のみ
- 不動産会社が直接融資を集う
ソーシャルレンディングが扱う事業は多岐にわたるのに対し、不動産クラウドファンディングは投資してもらった費用で不動産を購入し、家賃収入や転売で利益を得て投資家に分配します。
また、不動産クラウドファンディングは不動産会社をはじめとする不動産に知見のある業者でないと行えません。不動産の取り引きは「不動産特定共同事業法」に基づいて行われます。
一方、ソーシャルレンディングは投資家から集めた資金は企業や起業家での貸付に使われます。そのため実施業者は貸金業者の登録が必要です。
したがって、不動産を対象とした小口投資を行いたい場合は不動産クラウドファンディングを選び、多彩な事業に投資してリスクを分散したい場合はソーシャルレンディングを選ぶといいでしょう。
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングは投資家と資金調達を希望する起業家や企業、両方にメリットがあります。ここでは、ソーシャルレンディングを利用するメリットを投資家、起業家両方の点から紹介します。
投資家のメリット1:少額から投資が可能
投資家がソーシャルレンディングを利用すると、少額からの投資ができます。1万円~投資できる商品もあるため、副業として無理なく始められるでしょう。
また、不動産クラウドファンディングに比べると競争率が低いのもメリットの1つです。不動産クラウドファンディングの場合、条件が良い商品は発売から数分で完売になるケースも珍しくありません。
一方、ソーシャルレンディングはいろいろな事業への投資が可能なので、じっくり時間をかけて投資する商品を選べます。
投資家のメリット2:出資すれば満期まで放っておける
株式投資やFX投資は自分で運用が必要です。一方、ソーシャルレンディングは出資すれば満期まで放っておけます。本業が忙しくても、投資に関する知識がなくても投資を始められるのがソーシャルレンディングのメリットです。
投資家のメリット3:高い利回りが期待できる
ソーシャルレンディングは、3~8%の比較的高い利回りが期待できます。普通預金の利回りが0.1%以下を大幅に下回る中、利回りが高い投資は大きな魅力です。
一般的に高い利回りをうたっている投資はリスクが高い傾向です。しかし、ソーシャルレンディングは低額から投資が可能なので、失敗しても痛手は少ないでしょう。
投資で多少の冒険をしてみたい、といった方にもソーシャルレンディングはメリットが大きいです。うまくいけば、出資した金額に対して大きなリターンを得られます。
企業のメリット1:実績関係なく資金を調達しやすい
ソーシャルレンディングを利用すれば、企業は実績関係なく資金を調達できる可能性があります。金融機関から融資を受ける場合は、実績が重要視されます。
画期的で成功する可能性が高い事業であっても、実績のない企業では多額の融資は受けられません。手間と時間をかけて審査に申し込んでも、断られる場合もあるでしょう。
しかし、ソーシャルレンディングは一般の投資家から融資を受ける仕組みです。投資家を納得させられる事業計画を作ることができれば、多額の融資を受けられる可能性があります。
事業資金は一般的なクラウドファンディングを利用しても集められます。しかし、クラウドファンディングは沢山のプロジェクトがあってPRを積極的に行わないと、気づかれずに終わってしまうでしょう。
また、失敗した場合はプロジェクト未達成となって融資が受けられないケースもあります。返礼品を用意する手間もかかり、事業によっては利用しにくいです。
一方、ソーシャルレンディングは投資家から集めたお金で融資を受ける形式です。返礼品を用意する必要もありません。
企業のメリット2:資金調達を素早く行なえる
ソーシャルレンディングは、一般的な融資と比べて融資を受けられるまでの時間が短い傾向です。そのため、「急に資金の増額が必要になった」といった場合も利用すると便利です。
また、投資家から直接資金を調達できるので、資金額も比較的自由に設定できるのもメリットです。
ソーシャルレンディングのデメリット・リスク
ソーシャルレンディングはメリットだけでなくデメリットもあります。投資家も資金調達に利用したい企業も、デメリットやリスクを把握しておくことが重要です。
ここでは、ソーシャルレンディングを利用した投資・融資を行うデメリットを投資家と企業、両方の視点で紹介します。
投資家のデメリット・リスク1:元本割れのリスクがある
ソーシャルレンディングは企業にとっては融資ですが、投資家にとっては投資です。元本保証はされません。例えば、融資を受けた企業が事業に失敗して倒産するリスクもあります。
企業が倒産した場合、金利に基づいた配当金はもちろんのこと元本も保証されない可能性があります。例えば、100万円融資して元本割れして20万しか返ってこない可能性もあるでしょう。
元本割れリスクがあると承知して、投資を行いましょう。
投資家のデメリット・リスク2:質の悪いソーシャルレンディングの業者がある
ソーシャルレンディングは、まだ新しい投資方法です。そのため、投資方法や仕組み、リスクやデメリットなどが広く知られていません。
そのため、ソーシャルレンディングと誤解されるような投資方法で資金を集め、リターンすることなく消えてしまう悪質な業者も出ています。
ソーシャルレンディングを行うには、「金融庁への第二種金融商品取引業者登録」及び「各都道府県への貸金業者登録」が必要です。
誰でも仲介を行なえるわけではありません。また、登録番号をホームページに掲載する必要もあります。このほか、ソーシャルレンディングに勧誘する場合は、リスクの説明も行わねばなりません。
ソーシャルレンディングを検討する場合は、投資家も企業も業者が定められた登録を行っているか確認しましょう。
投資家のデメリット・リスク3:投資期間を自分で決められない
ソーシャルレンディングの運用期間は業者側で決められています。株式投資や投資信託などは、投資家の意思で売買できるので、自分のペースで投資ができます。一方、ソーシャルレンディングは急に手元にお金が必要になっても、解約できません。
また、早期償還のリスクもあります。早期償還とは、運用終了期間の前に運用を終了することです。
十分な利益を確保できず、これ以上の損益を出さないために行われるときがあります。そのため、運用の計画を立てても思うように進まない可能性があるのもデメリットです。
例えば、「配当金で数年間の生活費を確保しよう」と思ってもうまくいかない可能性もあるでしょう。
企業のデメリット・リスク1:ソーシャルレンディングの会社が倒産するリスク
前述したように、ソーシャルレンディングは新しい投資方法です。「金融庁への第二種金融商品取引業者登録」及び「各都道府県への貸金業者登録」が必要ですが、登録ができれば金融業の経験が少ない業者でも参入できます。
そのため、ソーシャルレンディングの会社が倒産するリスクもあります。ソーシャルレンディング業者の倒産は投資者だけでなく融資を受けている企業にも大変なリスクです。
融資を受けている業者が倒産した場合、財産を管理する弁護士などから借入資金の一括返済を求められる恐れもあるでしょう。そうなると、融資を受けている企業も倒産の危機です。
また、ソーシャルレンディングの業者が違法行為をした場合も事業停止になる恐れがあります。この場合投資家が返金を求める可能性が高く、融資を受けている企業が借入資金の一括返済を求められる場合もあるでしょう。
ソーシャルレンディングは実績に関係なく融資を受けるメリットがある一方、業者が倒産するリスクが高い傾向です。業者を入念にチェックしたうえで利用しましょう。
企業のデメリット・リスク2:金利や手数料が高い傾向
ソーシャルレンディングは、利回り3~8%の配当が一般的です。利回りの高さは企業が行う事業の期待値だけでなく、融資の金利にも関わってきます。銀行をはじめとする他の金融機関から融資を受けた場合と比べて、金利や手数料が高い傾向です。
金利が高いと、多額の融資を受けて長期間かけて返して行く場合、返済金額が高くなります。金利の高さによっては事業にも影響が出てくる可能性があります。
「すぐに融資してもらえる」「審査が甘い」といったメリットは「金利が高い」というデメリットの裏返しです。返済計画をしっかり立てたうえで、無理のない範囲で融資を受けましょう。
ソーシャルレンディングのリスクを防いで投資をする方法
ソーシャルレンディングだけでなく、投資には一定のリスクが伴います。したがって、リスクを可能な限り防ぐ方法を知っておくと、より安全に投資が可能です。
ここでは、ソーシャルレンディングで投資を行う際、リスクを可能な限り防ぐ方法を紹介します。
実績があり法令を遵守している業者を選ぶ
ソーシャルレンディングは業者選びが重要です。「金融庁への第二種金融商品取引業者登録」及び「各都道府県への貸金業者登録」を行っているのはもちろんのこと、以下のポイントをチェックしましょう。
- 資金調達額が高く組成実績が多い業者
- 貸し倒れが少ない
- 金利が高すぎない
資金調達額が高いのは、それだけ魅力ある事業が多い証拠です。また、組成実績とは、目標金額に達成した数です。
魅力的な事業は短期間で融資が集まってすぐに目標達成になる一方、魅力が今ひとつだったりリスクが高いと判断されたりするとなかなか目標金額に達成しない案件もあります。
ソーシャルレンディングが公開している募集案件の多くが組合不成立だったり不成立間近だったりしている場合、需要を掴む能力が低い可能性があり、リスクにつながります。
このほか、貸し倒れが多いとソーシャルレンディング業者の運営能力が低い恐れがあるでしょう。金利が高すぎるのも同様です。
組合不成立案件が多く、貸し倒れもあるのに金利だけが相場よりも高い場合は、金利は投資家を集めるための看板の可能性があります。高い金利につられず、堅実な運営をしている業者を選びましょう。
運営期間が希望通りのところを選ぶ
ソーシャルレンディングが募集しているファンドの運営期間は数ヵ月~数年と幅があります。途中解約はできないので、運営期間が希望通りのところを選びましょう。
運営期間が短ければリターンは少ないですが、リスクは低めです。初めてソーシャルレンディングを利用する場合は、数ヵ月で運用が終了するファンドを選び、感覚を掴んでもいいでしょう。
長期ファンドはリスクはやや高めになりますが、リターンは高めです。名のある企業がソーシャルレンディングを利用しているのを見つけた場合、運営期間が長期でも投資する価値はあります。途中解約できないことを考えて、無理のない範囲で投資してください。
取り扱いファンドの多さで選ぶ
取り扱いファンドが多いのは、それだけソーシャルレンディングを実施している業者の信頼が高い証拠です。また、取り扱っているファンドが多ければ、希望に合ったファンドも見つけやすいでしょう。それに加えて、優良なファンドに分散して投資できるメリットもあります。
ただし、取り扱いファンドが多くても口コミの評判が今ひとつといった業者はおすすめできません。投資が一般的になった現在、口コミは優良な情報収集手段です。良さそうなソーシャルレンディングを見つけたら口コミをチェックしてみましょう。
ソーシャルレンディングの種類
ソーシャルレンディングには、以下3つの種類があります。
- マーケット型:ソーシャルレンディングのサービスを運用する会社が、融資を受ける法人企業を審査して格付けする。投資家は格付けを見ながら融資をする企業と金利を決定する
- ファンド型:ソーシャルレンディング業者が融資に必要な資金を投資家から集めて企業に融資する方式、業者が企業の審査から金利まですべて決めてくれるので初心者でも参加しやすい
- オークション型:融資を受けたい企業に投資家がオークション方式で金利を入札していき、一番低い金利を設定した投資家が融資する権利を得る
現在、日本で主流となっているのはファンド型です。マーケット型、オークション型は少数ですが参加する場合はルールをよく確認したうえで利用しましょう。
ソーシャルレンディングのおすすめ業者5選
最後に、ソーシャルレンディングのおすすめ業者を5つ紹介します。ソーシャルレンディングの業者選びに悩んでいる方は、参考にしてください。
クラウドバンク

クラウドバンクは、2022年5月時点で「融資型クラウドファンディングNo1」を獲得した実績を持つ業者です。平均利回りは5.87%~と高めで、分別管理体制・投資家保護を目的とした外部監査の実施・融資先からの担保確保など、投資家を守るシステムもしっかりしています。
最低1万円~の融資が可能で、新しく口座を開くと楽天ポイントがプレゼントされるキャンペーンなども定期的に実施されています。
アプリも作られているので、ダウンロードすれば口座開設から投資まですべて一括まで行なえるのがメリットです。
また、証券会社が運用しているので信頼度も高く、安心して投資ができます。
オルタナバンク

オルタナバンクは、第一種金融商品取引業者である「SAMURAI証券株式会社」が運営している信頼度の高い業者です。
2024年6月現在、「貸付型ファンドの元本償還実績100%」を実現しているのが大きな強みです。堅実的な資産運用に適したソーシャルレンディングであり、少ない元手で長期的な安心が得られる可能性が高いでしょう。
融資する企業は、事業の収益性に基づいた厳密な審査プロセスをクリアしたところのみです。
法人や外国人でも口座開設が可能なのも大きなメリットです。
1か月の短期運用のファンドもあるので、初めてソーシャルレンディングをやってみたい方にも適しています。
口座開設から投資まで全ての操作をオンラインで完結できるため、家に居ながらにして投資を始められます。
Funds

Fundsは、上場企業を中心とした企業に融資を行っている低リスクのソーシャルレンディングです。投資は1円から可能なので、「月1万円未満で投資を始めたい」「まずは低い金額で様子を見たい」といった方にも適しています。
その一方で、予定利回りは1~3%とソーシャルファンディングの中では低めです。
投資自体が初めてといった方も安心して始められるのは魅力です。また、ソーシャルレンディングに慣れてきたら、他のソーシャルレンディングと併用して行ってもいいでしょう。
投資先企業の商品やホテル宿泊券、カタログギフトなどをリターンとして受け取れる優待ファンドもあります。
OwnersBook

OwnersBookは、不動産に特化したソーシャルレンディングです。不動産クラウドファンディングとの違いは、物件ではなく不動産会社に投資をする点です。
OwnersBookの特徴は、融資の担保として不動産を確保しているため、貸し倒れの心配がありません。担保とした不動産の評価額の80%までしか貸付を行わないため、物件売却価格の下落や諸費用が生じた場合でも、損失が20%以内なら投資家の元本は保証されます。
安心して投資をしたい方はもちろんのこと、100万円以上の投資をしたい方も安心して投資ができるのがメリットです。予定年利回りは3.0%〜5.0%とまずまずといったところです。
不動産クラウドファンディングと併せて利用してもいいでしょう。
LENDEX

LENDEXは、平均利回り6〜10%と高めな不動産に特化したソーシャルレンディングです。出資金は2万からと少々高めになっていますが、口座開設から最短で2日で融資ができます。
口座開設・維持手数料ゼロも強みとしており、1年以内の短期投資を中心なのも特徴です。例えば、1年の投資で利益を得てさらに大きな額を投資したいといった場合にも適しています。
近年は経済の風向きが変わりやすく、長期予想が立てにくい傾向です。5~10年の長期運用より、短期運用のほうが利益が出やすい可能性があります。
まずは、同社で元手を増やし、長期運用ができるソーシャルレンディングと組み合わせて利用してもいいでしょう。
まとめ:ソーシャルレンディングはメリット・デメリットの両方を把握したうえで利用しよう
ソーシャルレンディングは、現在注目が高まっている新しい投資方法です。金利が10%近いものもあり、1万円から投資ができるところも多いので若い世代の方も投資に参入しやすい方法です。
その一方で、新しい投資方法で仕組みやリスクが周知されていない分、詐欺まがいの業者も登場しています。金融庁も注意喚起を呼びかけているので、投資を検討する場合は、信頼できる業者を選び、リスクを考えて無理のない範囲で投資しましょう。
株式投資やFX投資のように好きな時に決算できないデメリットがある分、ほったらかしでも資産が目減りすることはありません。口座開設から投資までオンラインで完結できるので、日本全国どこからでも投資に参加できるのもメリットです。